大判例

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福岡地方裁判所 昭和43年(ワ)1762号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕被告小椋正則、同小椋トヨ子が訴外小椋正夫(当時一〇才)の両親であり、被告天野繁喜、同天野富美子が訴外天野宏昭(当時一〇才)の両親であること及び右小椋正夫と天野宏昭が昭和四三年四月六日午後五時三〇分頃福岡市大字片江一丁目所在の住宅地内においてキャッチ・ボールをしていたことは当事者間に争がない。

<証拠>を総合すると、

前記小椋正夫は身長一三〇糎、体重25.5キログラム、前記天野宏昭は身長一二五糎、体重二五キログラム、当時いずれも小学校第四学年に在学する少年であり、二人がキャッチ・ボールをしていた場所は前同所所在の西ビルタクシー社宅の広場で、ここは社宅入居者が遊び場として常用しているところであるが、同所は福岡市内の別府橋方面から油山方面に通ずる道路に沿つて道路側で約1.78米、広場側で約1.51米の高さを有する金網垣(フェンス)が入口を除いて設けられており、天野少年が右フェンスを背にして立ち、これに相対して約8.8米の間隔をおいて小椋少年が向い合つて立ち、互にグローブを持つて、周囲約二八糎の表面の柔くなつたラバ製の古いソフト・ボールをもつてキャッチ・ボールをし、これに興じていたところ、前同日時頃たまたま小椋少年の投じたボールが高かつたため天野少年が受け損じてボールは同少年のグローブの先端をかすめてフェンス上部に当り、そのはずみで道路側にはね、同所附近歩車道の区別のない道路左側を歩行中の原告(当時四七才)の後頭部左側に当つたこと及びその結果原告は「後頭部挫傷、頭部外傷後遺症」の傷害をうけたことが認められ、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。

以上の事実によれば原告の受傷は前記両少年の不注意にもとづく共同の違法行為に原因があるものといわねばならないが、他に特段の事情も窺えない本件では前記両少年が年令僅かに一〇才の小学生であることからして責任能力はないものと解するほかはなく、したがつて被告小椋正則、同トヨ子は前記小椋少年の、被告天野繁喜、同富美子は前記天野少年の各共同親権者として民法第七一四条にもとづく法定監督義務者の責任を免れず、前記受傷により原告に損害を生じたとすれば、これが連帯賠償の義務ありといわねばならない。被告らは本件においてはフェンス外の道路にまで注意を払うよう監督すべき義務はないし、また監督義務の懈怠もないと主張するが、如何に遊び場として常用され、フェンスでさえぎられている広場でのキャッチ・ボールであつても、フェンスを越えて通行中の歩行者にボールを当ててよいわけはなく、やはり道路の状況にも注意し、子供らにボールが外に飛び出さないよう向きをかえるなどして遊ぶように注意すべき義務はあるし、被告らにおいて、それらの監督義務をつくした事跡は認められないから右主張は採り得ない。 (麻上正信)

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